深刻な「身寄りのない高齢者の増加問題」
日本では独居高齢者が増え続けており、令和12年(2030年)には65歳以上の約24%が一人暮らしになる見通しです。
身寄りがいない、あるいは親族と疎遠な高齢者は、死後の手続きや費用精算を誰が行うのかという不安を抱えています。
一般的に、死亡後に必要な手続きは次の通りです。
- 葬儀・火葬・納骨
- 入院費・施設費・家賃などの精算
- 遺品整理・部屋の明渡し
- 公共料金や契約の解約
- 行政手続き(年金・健康保険等)
家族がいなければ、これらを行う人が存在せず手続きが完全に止まってしまいます。
自治体はどこまで対応してくれるのか
「身寄りなしなら自治体が対応してくれるのでは?」と考えがちですが、自治体が行うのは 火葬・埋葬など最低限のみ です。
札幌市の対応としては、身寄りのない独居者が亡くなりその遺骨の引取先が不明である場合、遺骨は市が2年間保管することになっています。2年の間に市は死亡者の戸籍情報を調査し、遺骨の引取先を探しますが、もし期限内に引取者が現れなかった場合は、市が運営する平岸霊園の合同納骨塚に無縁仏として納骨します。
各種手続き・清算に係る問題は
身寄りがない状態でなくなってしまった場合、住んでいた賃貸物件の家賃清算やライフラインの解約・清算、あるいは入居していた施設の費用の清算ができなくなってしまいます。
身寄りのない人が備えておくべき事柄とは
身寄りがないということは、死後に発生するさまざまな業務に対処できないということを意味しますので、前述の事柄を含め、特に以下については事前に対策を講じておく必要があります。
- 誰が遺体を引き取るか、葬儀・埋葬を行うか
- 家賃あるいは施設利用料などを誰が清算し、その原資はどこから用意するか
- 遺品整理は誰に依頼しどのように行うか
身寄りがなくこれら死後の各種業務を依頼できる人物がいない場合は、「死後事務委任契約」を利用し、万が一に備えておくことをお勧めします。
死後事務委任契約でできること
死後事務委任契約とは、本人の死後に必要な事務を第三者に依頼する契約です。身寄りがない人が安心して老後を過ごすための最も重要な仕組みといえます。
死後事務委任契約で委任できる主な内容
契約内容は自由に定めることができ、必要なことを細かく指定できます。
葬儀関連の手続き
- 葬儀社の手配
- 葬儀契約代行
- 宗教家の手配
- 火葬同行
- 埋葬に関する事務(納骨・墓地・改葬など)
行政手続き
- 健康保険証や介護保険証の返還と還付申請
- 年金関係の届出(死亡届・未支給年金請求手続き)
- 各種税金の納付
※死亡届については、権限を持った人物が作成したものを役所に持参する「使者」としての役割を担うことができます。
清算手続き
- 病院の入院費や治療費または施設の入居費の清算
- ライフライン(公共料金)の清算および解約
- 物件退去に係る手続き(賃貸借契約の解除など)
関係者への連絡
- お世話になった人など、委任者があらかじめ指定していた人への連絡
遺品整理
- 遺品整理手配、立ち合い
- デジタル遺品(SNSアカウントの閉鎖やパソコン・スマートフォンなどの個人情報抹消など)
預託金の準備で死後事務委任契約の遂行を確実に
死後事務には費用がかかるため、受任者が手続きできるよう、預託金として生前に費用を預けておく必要があります。
預託金の例
- 葬儀費用
- 火葬・納骨費用
- 賃貸物件の原状回復・退去費
- 遺品整理費用
- 行政手続きに必要な実費
契約書には預託金を明記し、使途を明確にしておくことが必須です。(例:公正証書での死後事務委任契約+預託金条項)
遺産活用については遺言書で対応する
身寄りがなく相続人となる人物もいない場合は、相続人以外にも財産を渡すことができる遺贈について遺言書に記しておくといいでしょう。遺贈により、お世話になった人へ財産を渡したり支援したい団体などへ寄附をしたりすることができます。
任意後見契約との併用が有効
死後事務委任契約は「生前の代理権」を持ちません。また、先に述べた通り、死亡届を作成する権限は持たず、作成された書類を役所に持参する「使者」としての役割しか担えません。
そこで重要になってくるのが、任意後見契約と死後事務委任契約の併用です。併用により、生前の財産管理から判断能力低下後の後見人サポート、死後の手続き一式の遂行まで途切れなく対応できます。
まとめ
身寄りがない人にとって、たとえ第三者であっても自分の死後のあらゆる手続きを任せられることは大きな安心材料となるでしょう。老後に不安を感じている人ほど、死後事務委任契約について前向きに検討してみるといいかもしれません。
当事務所でも死後事務委任契約に関するお問合せやご相談をいただきます。私たちはしっかりと背景事情に耳を傾け、最善と思われる契約内容を一緒に作り上げていきますので、お一人で抱えることなく安心してご一報いただければ幸いです。










