認知症の配偶者がいる場合、通常の相続では子に財産を集中させることはほぼ不可能です。唯一、家族信託を事前に組んでおけば、配偶者の生活を守りながら、最終的に子へ財産を渡す仕組みを作ることができます。
相続人が認知症の場合は遺産分割ができない
認知症の相続人(配偶者)が認知症の場合、以下の問題が必ず発生します。
遺産分割協議ができない
遺産分割協議には「判断能力」が必要です。認知症の配偶者は法的に協議へ参加できず、相続手続きが停止します。
銀行口座・不動産の取引が止まる
相続が開始すると、被相続の口座は凍結され不動産の売却もできなくなり、財産の管理がストップしてしまいます。相続人である配偶者が認知症だと、財産の扱いがさらに複雑になります。
成年後見制度では子に財産を渡せない
相続人が認知症である場合、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい、遺産分割協議を進める必要があります。ただし、以下の点において「子への財産承継」は叶わなくなる点に留意しましょう。
成年後見人は「認知症の相続人(配偶者)の財産を守る」
成年後見人の使命は被後見人の保護や財産管理などにあります。このため、後見人は次のような遺産分割の仕方に賛成することはありません。
- 認知症の配偶者に財産をほとんど残さない
- 子に大きく財産を分ける
これは法律上当然の対応です。後見人は被後見人の利益を守る義務があるためです。
つまり、成年後見制度を使った場合の優先順位は「配偶者>子」となり、子に多く財産を継がせることはできません。
子への生前贈与は税金面のリスクが大きい
相続で大変な思いをするのであれば生前贈与しておけばよいのでは?という考え方もあるでしょう。しかし、生前贈与には以下のような問題点があることも覚えておきましょう。
生前贈与の問題点
- 110万円を超えると高額な贈与税が発生する
- 不動産を贈与すると不動産取得税が発生する
- 認知症になると生前贈与自体が不可能になる
- 相続開始前3年以内の贈与は相続税に加算される
生前贈与だけで子に財産を集中させることは非現実的であることがわかります。
認知症の配偶者がいても子へ財産を引き継がせる方法
「配偶者が認知症であるため、自分の財産は子に継がせて認知症の親の面倒をみるのに使ってほしい」といった希望がある場合、唯一の解決策は家族信託の仕組みを活用することだといえそうです。
家族信託であれば、認知症の配偶者の権利を守りながら、子に財産管理を任せることができるからです。
家族信託を使った相続対策の仕組み
- 委託者(財産の持ち主):被相続人
- 受託者(管理を任される人):子
- 受益者(利益を受ける人):被相続人→その後配偶者
- 二次受益者:配偶者
- 三次受益者(最終的に財産を得る人):子
- 信託財産:不動産・預貯金
家族信託が発動する流れ
上記の仕組みのなかで家族信託がどのように発動するか、流れを追っていきましょう。
① 本人が元気なうち(生前)
被相続人(委託者)は、子(受託者)に財産の管理を任せることができます。認知症の配偶者がいても、受託者は問題なく信託財産の管理ができるので、安心して任せられるでしょう。
② 被相続人(委託者)が亡くなった後
受託者である子が、管理者として財産を管理し続けることになります。認知症の配偶者は「受益者」として生活費や必要費を保障されます。
③ 認知症の配偶者が亡くなった後
信託契約にしたがい、財産は自動的に子へ移転します。遺産分割の必要がないため、認知症リスクも影響せず、スムーズに財産継承が行われます。
家族信託を使うメリット
- 認知症配偶者がいても相続が止まらない
- 成年後見制度による制約を避けられる
- 配偶者の生活を守りつつ、最終的に子への承継が可能
- 親子間の希望を契約で確定できる
- 相続発生後もスムーズに管理できる
まとめ
家族信託は、「配偶者に必要な生活保障を残しながら子へ財産を託す」という目的を最も安全かつ確実に叶える手段です。
すでに認知症を発症している配偶者(将来の相続人)がいて、将来的な財産管理や遺産分割に不安を感じておられる方は、ぜひ弊社の無料相談をご利用ください










