贈与と相続、遺贈の違い
財産の移転には「相続」「遺贈」「贈与」の3つがあります。それぞれ税金の仕組みが異なるため、生前対策を考えるうえで理解が欠かせません。
相続
被相続人が死亡した瞬間に開始され、法律で定められた相続人が財産を取得するものです。課税されるのは相続税です。
遺贈
遺言によって財産を受け取る制度で、誰にでも財産を渡すことができます。遺贈も相続税の対象となります。
贈与
生前に「財産をあげます」「もらいます」という双方の意思表示によって財産を移転する行為です。課税されるのは贈与税であり、受贈者が納税義務を負います。
贈与税は相続税の補完税と言われ、相続税逃れを防ぐため相続税より税率が高く設定されています。そのため、贈与したつもりがなくても課税されるケースには十分注意が必要です。
贈与税がかかる財産とは
贈与税の対象となる財産には次の2種類があります。
本来の贈与財産
現金・預貯金・株式・不動産など、通常の贈与により取得する財産です。
みなし贈与財産
「贈与したつもりがなくても課税される」財産で、次のようなケースが該当します。
- 借金の免除・肩代わり(免除額・肩代わりされた金額が贈与とみなされ課税)
- 著しく低い価額での売買(時価との差額が贈与とみなされ課税)
- 他者が掛金を負担した個人年金の給付を受ける場合
- 他者が保険料を負担していた生命保険金を受け取った場合
- 親族間の借金で返済の実態がない場合
親族間の資金移動は税務署から疑われやすいため、借用書の作成・返済記録の保存は必須です。
贈与税がかからない財産とは
贈与税が課税されない主な財産は次のとおりです。
- 法人からの贈与(給与所得・一時所得として課税)
- 扶養義務者からの生活費・教育費(常識的範囲内)
- 奨学金などの一定の給付金
- 特別障害者扶養信託に基づく給付金(6,000万円まで非課税)
- 相続開始年に被相続人から受けた贈与(相続税の対象)
- 香典・お中元・結婚祝いなど社交上必要な贈与
- 離婚の慰謝料・財産分与
生前贈与を行う際は、この「非課税の範囲」を正しく理解しておくことが重要です。
贈与税の計算方法
贈与税には次の2つの課税方式があります。
【1】暦年課税
1年間(1/1〜12/31)の贈与額に基づき課税されます。計算式は次の通りです。
(年間の贈与額-基礎控除110万円)×税率-控除額
税率は10%〜55%までの累進課税で、直系尊属からの贈与には特例税率が適用されます。
【2】相続時精算課税
贈与時は2,500万円まで非課税、超える部分には一律20%が課税されます。贈与者の死後は、贈与財産を相続財産に合算し、相続税で精算します。ただし、相続時精算課税を一度選択すると、暦年課税に戻れないため慎重な判断が必要です。
贈与税対策で重要なのは「証拠」と「制度理解」
贈与は口約束でも成立しますが、以下の理由から契約書を作成しておくことが望まれます。
- 他の相続人とのトラブル防止
- 贈与の事実を税務署に証明できる
- みなし贈与の疑いを防げる
特に親族間の金銭のやり取りは、「贈与か貸付か」 が争われる典型例のため、契約書・返済記録・銀行振込の履歴など、客観的資料を必ず残しておくべきです。
まとめ
贈与税は「通常の贈与」だけでなく、気づかないうちに課税される「みなし贈与」も対象となります。相続や遺贈との違い、非課税制度、暦年課税・相続時精算課税の仕組みを正しく理解し、生前贈与が思わぬ税負担につながらないよう注意することが重要です。特に親族間の金銭の授受は記録を残し、必要に応じて専門家へ相談することで、税務トラブルを未然に防ぐことができます。










