本人の判断能力が衰えたときに備える任意後見契約は、任意後見人だけでなく、任意後見監督人の存在が非常に重要です。任意後見監督人は、任意後見人が正しく業務を行うかどうかを監督する立場にあり、家庭裁判所が選任します。
ここでは、任意後見監督人になれる人・なれない人の条件について詳しく説明します。
任意後見監督人になれる人・なれない人の条件
任意後見監督人になるにはどのような条件が求められ、またなれない人はどのような点に注意すべきか整理していきましょう。
任意後見監督人になれる人
任意後見監督人は家庭裁判所が選任し、原則として専門性と中立性を持つ第三者が選ばれます。一般的には以下のような人が候補となります。
- 行政書士
- 司法書士
- 弁護士
- 社会福祉士
- 成年後見の実務経験がある専門家 など
ポイントは「本人や任意後見人と利害関係がなく、専門的な監督業務が適切に行える人物であること」です。任意後見契約書には、「どのような人物を任意後見監督人として希望するか」を記載できますが、あくまで希望であり、最終判断は家庭裁判所が行います。
任意後見監督人になれない人
任意後見監督人は強い権限と責任を持つ立場のため、法律で明確に制限されています。任意後見契約に関する法律(任意後見法)第4条は、以下に該当する場合は任意後見監督人を選任できないと定めています。
【任意後見監督人になれない人(任意後見法4条)】
- 本人が未成年者である場合
- 本人がすでに法定後見(後見・保佐・補助)の対象となっている場合で、その後見継続が本人にとって必要と判断されるとき
- 任意後見受任者(後見人候補者)が以下に該当する場合
- 民法847条で規定される「後見人の欠格事由」に該当
(未成年者、破産者、行方不明者など)- 本人に対して訴訟中または過去に訴訟していた者、その配偶者・直系血族
- 不正行為・不行跡・任意後見人として不適切と認められる者
これらに該当する場合、家庭裁判所は監督人の選任を拒否し、必要であれば法定後見制度への移行を求めることがあります。
任意後見監督人選任の流れ
任意後見監督人選任の流れについて、わかりやすく整理しました。
【1】本人・配偶者・4親等内親族・任意後見受任者のいずれかが家庭裁判所に申立て
任意後見契約が発効するためには、家庭裁判所に「任意後見監督人を選任してください」と申し立てる必要があります。申立てができるのは法律で決まっており、本人のほか、配偶者や4親等内の親族、または任意後見受任者(後見人候補者)が対象となります。
また本人の判断能力がすでに低下している場合には、周囲の親族が代理で申立てを行うケースもあります。
申立てには以下の資料が必要です:
- 任意後見契約公正証書
- 本人の診断書(判断能力の状況を示すもの)
- 財産・収支に関する資料
- 申立書一式
これらを家庭裁判所に提出し、正式な審理へと進みます。
【2】裁判所による審査
申立てを受けた家庭裁判所は、監督人の選任が必要な状況かどうかを慎重に審査します。審査では、次のような点を確認します。
- 本人の判断能力がどの程度低下しているか
- 任意後見契約が適切に作成されているか
- 任意後見受任者が欠格事由に該当しないか
- 任意後見監督人が必要と認められるか
家庭裁判所は必要に応じて本人への面談を行い、家族など関係者から事情を聴取することもあります。この審査を通じて、任意後見契約を発効させるに足る状況かどうかを判断します。
【3】適格な専門家を監督人として選任
審査の結果、「任意後見契約を発効させるべき状況」と判断された場合、家庭裁判所は任意後見監督人を選任します。監督人は任意後見人の業務を監督する重要な役割を担うため、一般的には以下のような専門家が選ばれます。
- 行政書士
- 司法書士
- 弁護士
- 社会福祉士 など
家庭裁判所は、
- 中立性
- 専門性
- 実務能力
を基準にして適切な人物を選任します。
監督人が決定すると、裁判所から「選任審判書」が交付され、同時に法務局へ後見登記がされます。これにより、任意後見契約は正式に発効し、任意後見人は契約書に記載された代理権の範囲で業務を開始できるようになります。
【4】任意後見契約が正式に発効
家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、その内容が法務局で登記された時点で、任意後見契約は正式に発効します。これにより、任意後見人は契約書に定められた代理権の範囲で、本人の財産管理や身上監護に関する業務を開始することが可能になります。
任意後見契約が発効する条件
- 本人に「判断能力の低下」が認められること
- 家庭裁判所が任意後見監督人を選任すること
- 後見登記がなされること
法定後見と大きく異なる点は、本人が元気なうちに「誰に何を任せるか」を自分で決めておけるという点です。発効後は、契約書に記載された代理権に沿って、任意後見人が適切に手続きを進めることになります。
【5】任意後見人の業務を定期的に監督
任意後見契約が発効すると、任意後見監督人は実務において非常に重要な役割を果たしていきます。監督人は、任意後見人が契約や法律に基づき、本人のために適切に業務を行っているかをチェックし、不正やミスを防ぐための「監督者」として活動します。
監督人が行う主な監督業務
- 財産目録の確認
任意後見人が作成した、本人名義の財産一覧(預金・不動産・有価証券等)を精査し、記載内容が正しいかを確認します。
- 収支報告のチェック
生活費・医療費・施設費など、任意後見人が本人の財産から支出した内容について、明細や領収書と照合し、妥当かどうかを確認します。
- 重要な契約(不動産売却・入所契約など)の内容確認
本人の利益が損なわれないか、契約内容に不正や偏りがないかを見ます。
- 任意後見人への助言・指導
必要に応じて任意後見人に改善を指示したり、手続き上の助言を行ったりします。
監督人の存在により、本人の財産が不正に使われたり、誤った判断で不利益を受けたりするリスクが大幅に下がります。任意後見制度の安心感を支えているのは、この「任意後見監督人の継続的なチェック」といえるでしょう。
まとめ
任意後見監督人は、任意後見契約を安全に機能させるための最重要人物です。本人や任意後見人と利害関係のない専門家が選ばれるのが一般的で、法律で欠格事由が定められているため、適格者のみが監督人になれます。
弊社では、任意後見契約の作成や任意後見監督人選任の申立てサポート、実務サポートまで一貫した対応が可能です。ご不安があればお気軽にご相談ください。










