子が障害者で一人っ子である場合、親が亡くなった後に兄弟姉妹からサポートを受けることができないため、親は元気なうちになんらかの対策を講じておく必要があります。同時に、相続が起こったときに誰が手続きを行うか、財産の行方はどうなるのか、といったことについても考えておかなければなりません。
【この記事の要点】
- 障害を持つ一人っ子の「親亡き後問題」とは何か
- 金銭管理の問題
- 各種手続きの問題
- 住まいの問題
- 家族信託契約の活用
- 成年後見制度の活用
この記事では、兄弟姉妹がいない一人っ子が障害者だった場合の「親亡き後問題」について説明していきます。具体的にどのような問題があり、どのような対策を取ることができそうか、1つひとつ確認していきましょう。
障害を抱える一人っ子が直面する親亡き後問題とは
親がまだ元気なうちは、親が障害を抱える一人っ子の生活をしっかりサポートすることができます。しかし、親が亡くなった後、その子が具体的にどのような問題に直面することになるか、具体的なケースを想定しておかなければなりません。
障害にも程度があり、ある程度自立した生活が可能な場合もあれば、他者によるサポートがなければ日常生活を送れない場合もあります。いわゆる「親亡き後問題」が起こるのは後者のケースで、それまで生活面で支えてくれていた親が亡くなることにより、残された子が金銭面・各種手続き・住まいなどの問題において困難に陥る可能性が出てくるのです。
生活上の金銭管理に関する問題
自ら生活費の管理をしたり生活のためにお金を使ったりするには、相応の計画性や想像力が欠かせません。子がその障害により自分自身で金銭管理を行うことができない場合、親が代わってサポートしてきたことでしょう。しかし、親が亡くなると金銭管理について支援してくれる存在がなくなるため、次のような問題が浮き彫りになってきそうです。
【障害を持つ子に起こる可能性のある問題】
- 生活費の工面や支払いがうまくいかない
- 病院代や各種支払いをうまくできない
- 1ヶ月単位での家計管理ができない
- 親の遺産を長期間に渡り管理していけない
- 知的障がいの場合は詐欺や悪徳商法に巻き込まれやすい など
※上記はあくまでも考え得る例です。すべての項目が実際に起こることを指摘したものではありません。
家族信託契約の活用も検討を
家族のなかに認知症の人や障害を持つ人がいるときによく活用されているのが、家族信託契約です。たとえば以下のしくみを作っておくことで、親が亡くなった後もその財産を適切に管理したり使ったりしていくことができるでしょう。
【家族信託契約での考え方】
信託財産:親の財産
委託者:親
受託者:親戚(たとえば)
受益者:障害を持つ子
家族信託契約を活用した場合、親が委託者となり、信用のおける親戚などを受託者として信託財産を預け、契約発効以後は受託者である親戚が信託財産を管理し受益者である子に生活費として渡したりすることができるようになります。
親の死に伴う諸手続に関する問題
親が亡くなったら、一般的には子が親の葬儀と死後に発生する各種手続きを行い、また期限内に相続あるいは相続放棄の手続きを済ませることになります。しかし、障害を持つ子が1人残された場合、次に挙げるような手続きを単独で行うのは困難であるといえるでしょう。
【親の死後に発生する各種手続き例】
- 親の葬儀の準備と執り行い
- 死亡届や保険年金関連などの手続き
- 相続に係る預貯金や不動産の名義変更手続き
- 期限内の相続手続きおよび相続税申告手続き など
死後事務委任契約の活用も検討を
死後事務委任契約とは、委任者が亡くなった後に起こる各種手続きを受任者に任せるものです。親自身が元気なうちに、信頼のおける第三者か専門家を受任者として契約を締結することが多いといます。なお、死後事務委任契約の対象となる事務手続きは幅広く、たとえば以下が含まれます。
【死後事務委任契約の対象事務手続き例】
- 葬儀手配
- 死亡届など役所への手続き
- 親戚および故人の関係者への連絡
- 納骨または埋葬の手続き
- 病院代や各種未払い債務の支払い
- 遺品整理 など
死後事務委任契約を締結しこれら事務手続きを受任者に任せることができれば、障害者である一人っ子に負担が集中することがありません。
親の死に伴う住まいに関する問題
親が亡くなり障害を持つ一人っ子が残されたとき、その子は以後どこで暮らしていけばいいのでしょうか。本人がこれまでどこで暮らしていたかによって対応も変わってきそうです。
【賃貸物件】不動産管理の手間は発生しないが毎月の賃料を確実に支払うための支援が必要。
【親名義の不動産】名義変更手続きや固定資産税の納付など不動産管理の支援が必要。
賃貸住宅については、障害の程度から判断能力が不十分であるとみなされた場合、新たな賃貸物件の契約を行うことが難しくなるでしょう。親自身がまだ元気なうちに家族信託契約を締結しておき、信託財産から家賃を支払った方がいいかもしれません。また、子の障害の程度によっては、一人暮らしをさせるよりグループホームなどへの入所が検討される場合もあります。
親亡き後の財産承継にどう対応するか
親が亡くなった後、親の財産を子が引き継ぐときに以下のような問題が発生することがあります。
- 障害を持つ子だけでは財産相続の手続きができない
- 正しく財産承継できなかった場合、財産が国庫に帰することも考えられる
こういった問題への対応策として、家族信託契約や成年後見制度の活用が考えられます。
家族信託契約の活用
通常、相続が起こると遺産分割協議を経て財産承継が実現しますが、障害を持つ一人っ子が十分な判断力をもって遺産分割協議に臨めるかどうかが問題です。そこで検討したいのが家族信託契約の活用で、以下のしくみを構築することにより親の存命中から財産承継の道筋をつけることができるでしょう。
【委託者】親
【信託財産】親の財産
【受託者】財産管理を行ってくれる人(親戚など信頼のおける人物)
【受益者】障害を持つ一人っ子
家族信託契約の詳細については当行政書士法人にご相談いただけますと幸いです。障害を持つ一人っ子が受益者となることで、親の死後の相続手続や子への経済的支援がスムーズに運ぶことが期待されます。
成年後見制度の活用
成年後見制度とは、認知症の人や障害を持つ人などを保護するために、財産管理や身上監護について支援を受けられるしくみのことをいいます。子が障害を抱えており十分な判断能力がないと認められる場合、成年後見制度のうち法定後見を利用することになります。
ただし、後見人は家庭裁判所により選任されますので、必ずしも身内が選ばれるとは限らず、法律や福祉の専門家などが後見人となることもあります。誰が後見人になったとしても、当該人物は障害を持つ一人っ子のために財産管理や親亡き後の身上監護を担うことになるので、親としては安心できる状況を用意できるでしょう。
成年後見の申し立ては、本人・配偶者・四親等内の親族などと定められていますので、子を保護するための環境は早めに整えておいた方が良いかもしれません。
まとめ
障害を持つ一人っ子のために親として何ができるか、元気なうちから将来を見越してしっかりと準備を整えておくといいでしょう。家族信託契約や遺言、成年後見制度の活用など、子を保護するための方法はいくつか考えられますので、当行政書士法人の無料相談をご利用いただき、各ご家庭に合った方法を見つけてみましょう。










