高齢になるなどして本人の判断能力が衰えたときのために、財産管理や身上監護の代理業務を行ってもらう任意後見契約を結ぶことができます。本人にとって非常に重要な事柄を任せますので、誰に任意後見人を引き受けてもらうかがポイントとなってくるでしょう。ここでは、任意後見人の選び方について説明していきます。
任意後見人が代理する業務とは
任意後見人とは、本人との間で交わした任意後見契約に基づき、本人の財産管理や生活、療養などのサポートを行う人のことをいいます。本人の判断能力が低下した時点で、申立てにより家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、実際に契約が発効するのです。
任意後見人による代理権の範囲
任意後見契約の内容は、どのような事柄を依頼するかによっても変わってきますが、大別すると財産管理と身上監護に関する支援が主となります。財産監護とは本人の財産を処分したり管理したりすることをいい、身上監護とは本人の生活や療養についてサポートを行うことを指します。それぞれについてより詳しく整理していきましょう。
財産管理
財産管理とは、本人名義の不動産や動産を管理することをいいます。具体的には以下のような業務が該当します。
- 不動産の売却や管理
- 預貯金などの動産の管理
- 年金の管理
- 各種支払い
- 各種手続き
- 賃貸借契約
- 遺産分割協議への参加 など
身上監護
身上監護とは、本人の日常生活における各種の法律行為(医療や高齢者施設などへの入所ほか)に関する法律行為を代理するものです。具体的には以下のような業務が該当します。
- 入院手続き
- 医療費の支払い
- 介護関係の手続き
- 高齢者施設などへの入所手続き
- 介護費用の支払い など
任意後見人の業務に含まれないもの
任意後見人が行うことができるのは、判断能力が低下した本人に代わる事務的な行為に限られており、日常生活のサポートなどは含まれていません。
任意後見人の選び方
任意後見人を選ぶ際は、以下の5つの基準を必ず確認してください。
①【誠実性】自分の財産管理を誠実に行ってくれるか
任意後見人は、あなたの財産を自由に管理・使用する権限を持ちます。そのため最重要なのは 「絶対に裏切らない人かどうか」という点になってくるでしょう。対象人物の誠実性が大きなカギとなってきます。
具体的なチェックポイント
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過去に金銭トラブルを起こしていない
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ギャンブル癖がない
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借金問題を抱えていない
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約束を守れる人物である
任意後見人には法律上「善管注意義務」「身上配慮義務」が課されますが、最初から誠実性のない人を選ぶと、財産が守られません。
②【判断能力・事務能力】必要な手続きに対応できる人か
任意後見人は、事務処理能力が求められる場面が多くあります。
事務手続き例
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預金管理、支払い処理
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医療契約・介護契約の手続き
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不動産の売却や賃貸契約
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成年後見監督人への報告書提出
事務作業に苦手意識がある人、書類の管理ができない人を選ぶと後々トラブルになります。
③【継続性】自分より先に亡くなる可能性は低いか
任意後見契約は、本人が認知症になった後、数年〜10年以上続くこともあります。
したがって、高齢の親を後見人にした場合、「後見人が先に亡くなり契約が終了」という事態に陥ることも考えられ、結局は法定後見に移行し、望まない後見人が選任される可能性も生じます。
望ましい後見人像
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自分より若い
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健康状態が安定している
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長期間サポートできる見込みがある
④【利害関係の薄さ】利益相反が起こりにくい人か
任意後見人と本人の利害が対立しないことが重要です。
家族を後見人にした場合の例
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本人の財産を相続したい
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本人の不動産を早く売りたい
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本人のお金を自分の生活費に使いたい
という誤った行動に走るケースは多く見られます。家族が悪意を持っていなくても、「相続人=お金の利害関係者」である以上、利益相反の可能性はゼロではありません。
⑤【専門性】必要な場合は専門家を任意後見人に
特に以下に該当する場合は、行政書士・司法書士・弁護士等の専門家を後見人に選ぶメリットがあります。
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財産が多い
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不動産を複数所有している
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相続を巡って家族間に不安がある
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家族と疎遠
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子どもがいない
専門家は法律知識・手続き能力を備えており、中立性・継続性にも優れています。
任意後見人になれない人とは
法定後見の場合は家庭裁判所により後見人が選任されますが、任意後見人は任意後見契約に基づき本人の自由意思を反映した人選が可能です。ただし、後見人の欠格事由が法律で定められていますので、これに該当しないかどうか注意する必要があります。
(後見人の欠格事由)
第八百四十七条 次に掲げる者は、後見人となることができない。
一 未成年者
二 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
三 破産者
四 被後見人に対して訴訟をし、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
五 行方の知れない者
※e-Govより抜粋
なお、実際に任意後見契約を発効させるためには、家庭裁判所に任意後見監督人の選任申立てを行わなければなりません。本人の判断能力が低下し任意後見人による代理行為が必要になったことを理由に申立てるのです。これにより家庭裁判所は任意後見監督人を選任し、ようやく任意後見契約が有効化されます。
まとめ
独り身の高齢者や親族が遠方にいる方などは、自分の判断能力が低下したときの速やかな対応を親族に任せることが難しいことも少なくありません。そのようなときに備えて、まだ判断能力が十分であるうちに任意後見契約を結んでおけば、いざというときでも安心して身の回りの事務手続きなどを任せることができます。
当事務所でも任意後見契約に関するサポートを行っており、まずはしっかりとお話をうかがったうえで適切と思われる対応を提案させていただきます。任意後見契約公正証書作成のサポートや当職を任意後見人とする任意後見契約のご依頼、任意後見監督人の選任申立ての代行も承っているのでお問い合わせください。なお、一部、司法書士との連携が必要になる部分もありますが、当事務所では各種士業との協力体制を整えていますので、ご安心のうえご相談いただくことをおすすめします。










