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事業承継で株式買い取り資金が不足する場合の対策
事業承継を行う際、後継者が会社の株式を買い取る費用に困るケースがみられます。ここでは、株式の買い取り資金の準備方法について説明していきます。
事業承継で移すべき2つの権限
事業承継で最も重要なのは、経営権と支配権という2つの権限を後継者に譲ることです。2つの権限それぞれについてまとめていきましょう。
経営権
経営権は形こそないものの、経営に関するさまざまな権利を総称しており、財産権のひとつとされています。経営権が他者に譲られるということは経営者の交代を意味しますので、後継者に株式を集中させることは非常に重要なのです。
支配権
株式総数の3分の2以上を有している状態を「支配権がある」といいます。経営権と同様、後継者に対して支配権が移譲されることが望ましいといえます。
株式の買い取り資金の準備
株式を買い取るための資金が十分にある場合は問題ありませんが、資金不足の場合、何らかの策を講じなければなりません。ここでは、具体的な対策について説明していきます。
事業承継税制の利用
事業承継制度とは、中小企業を対象として贈与税や相続税の納税を猶予あるいは免除するものであり、後継者不足の解消を図る目的があります。
贈与税について
現経営者から株式を含む財産贈与を受けたとき、後継者は贈与された株式に対する贈与税の納税が猶予および免除されます。
相続税について
相続や遺贈によって後継者が株式を取得したとき、その80%に当たる部分の相続税の納税が猶予および免除されます。
なお、対象となる株式は、贈与税・相続税いずれについても、発行済議決権株式総数の3分の2までの部分となりますので注意しましょう。
経営承継円滑化法の金融支援を受ける
中小企業庁による事業財務支援策のひとつとして、経営承継円滑化法という制度を挙げることができます。
経営承継円滑化法においては以下の支援を措置しています。
(1) 税制支援(贈与税・相続税の納税猶予及び免除制度)の前提となる認定
(2) 金融支援(中小企業信用保険法の特例、日本政策金融公庫法等の特例)の前提となる認定
(3) 遺留分に関する民法の特例
(4) 所在不明株主に関する会社法の特例の前提となる認定
※中小企業庁ホームページより抜粋
税制支援・金融支援・所在不明株主に関する会社法の特例については、都道府県知事による認定を受ける必要があります。遺留分に関する民法の特例の確認作業は中小企業庁が行います。たとえば融資に関しては、「株式会社日本政策金融公庫法及び沖縄振興開発金融公庫法の特例」により、金銭を借り入れることができるようになるのです。
所有権と経営権を分けて株式を保有する
小規模事業者では、経営者が株主であることが非常に多いですが、会社の規模が大きくなっていくと同時に株式を保有するための資金が必要になってきます。個人で多額の資金を準備することが難しい場合、あえて株主と経営者を別人物とすることで所有権と経営権を分けるのも一案です。
株主と経営者が分離することにより、経営の健全化が期待できるとともに、経営者は経営に専念できるようになるでしょう。ただし、株主と経営者が分離するということは、大株主が経営に関与する可能性も出てくるということでもあります。誰を株主にするか、その選定を正しく行い後継者に繋いだ事業がスムーズに進むよう配慮することも大切です。
まとめ
事業承継における株式買い取り資金の問題について説明してきましたが、小規模事業者についていえば、資金面だけではなく取引先との関係維持や事業ノウハウの引き継ぎなど、さまざまな課題が露わになることでしょう。円滑な事業承継を進めるためにも、専門家のサポートは積極的に受けることをおすすめします。
当事務所では、事業承継や相続、会社設立等に注力していますので、ぜひ一度ご相談いただき、現在抱えておられる問題を解決する糸口を一緒に見つけましょう。