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相続時精算課税制度のメリットとデメリット
生前の祖父母や親から子や孫に対して財産贈与する際、相続時精算課税制度を利用することができます。ここでは、相続時精算課税制度を利用するメリットとデメリットについて説明していきます。
相続時精算課税制度をわかりやすく説明
国税庁によれば、相続時精算課税制度とは「60歳以上の祖父母や親から18歳以上の子や孫に対し、生前贈与を行った場合の贈与税非課税制度」であることがわかります。
※成人年齢が18歳に引き下げられたことにより、令和4年4月1日から子や孫の年齢は20歳以上から18歳以上になりました。
相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳(注1)以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。この制度を選択する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日の間に一定の書類を添付した贈与税の申告書を提出する必要があります。
※国税庁ホームページより抜粋
この制度を利用することにより、生前贈与した財産額2,500万円までについて贈与税が非課税となります。なお、相続開始時には、相続財産に贈与分を足して相続税の計算を行います。
相続時精算課税制度のメリットとデメリット
2,500万円までであれば贈与税が非課税となる点は大きなメリットですが、一方でデメリットも存在します。ここでは、同制度のメリットとデメリットについてみていきましょう。
相続時精算課税制度のメリット
相続時精算課税制度にはいくつもの大きなメリットがあります。
贈与額2,500万円までは贈与税が非課税になる
生前贈与された金額が2,500万円までであれば、贈与税が非課税となります。2,500万円を一度に贈与しても数回に分けて贈与しても、合計金額がオーバーしなければ制度は適用できるので、非常に大きなメリットだといえるでしょう。
賃貸不動産を贈与すれば相続税対策にもなる
不動産の評価額が2,500万円を上回らなければ、不動産にも制度を利用できます。贈与を受けた不動産が賃貸物件であった場合は特にメリットが大きいといわれています。
相続時には生前贈与された財産を足し戻して相続税額を計算しますが、対象となるのは贈与された不動産のみであって、そこから生み出される収益(賃料)は含まれないため、相続税対策として高い効果が期待できます。
仮に、祖父母や親が賃貸不動産を所有したまま亡くなった場合、不動産だけではなく収益に関しても相続財産として扱われるため、相続税額に大きな差が生じるのです。
相続トラブルを予防できる
相続時精算課税制度を利用して財産の生前贈与を行えば、相続発生時に「誰がどの財産を相続するのか」といったトラブルを予防できます。ただし、相続財産の分配を行ったとき他の相続人に不公平感が生まれないよう、贈与者はバランスを考えて財産贈与を行うべきでしょう。
相続時精算課税制度のデメリット
相続時精算課税制度を利用することによるデメリットについても確認しておきましょう。
暦年課税を利用できなくなる
制度の利用を決定し、税務署に「相続時精算課税制度選択届出書」を提出してしまうと、以降は同じ人物から贈与を受けても、暦年課税における年間110万円の基礎控除を受けることができなくなります。財産を持っているのが祖父母や両親のいずれか1人である場合は非常に大きなデメリットとなります。
ただし、祖父母や両親のうち他の人物から別途生前贈与を受ける場合は、相続時精算課税制度を利用しない限り暦年課税の非課税枠を使うことができます。
後から相続税が発生する可能性がある
贈与税の非課税枠を使える相続時精算課税制度ですが、相続時には贈与された財産分も足し戻して相続税の金額を計算しなければなりません。このとき、対象となる金額から相続税の基礎控除額を差し引いても多額の課税対象額が残ることがあり、その場合、相続税額が大きくなってしまうリスクもあります。
生前贈与された財産は相続税の物納に利用できない
相続税が多額で納税しきれない場合、物納制度により相続税の納税に充てることができます。しかし、相続時精算課税制度を利用して得た財産については物納することができませんので、相続税が発生した場合は自ら金銭を工面することが求められます。
まとめ
相続時精算課税制度を利用して財産の贈与を行う場合は、必ず将来の相続税を見越して検討する必要があるでしょう。せっかく生前に財産贈与したとしても、贈与者が亡くなった後に受贈者が相続税で苦労しては逆効果ですので、できれば相続問題に詳しい専門家のサポートを受けることをおすすめします。
当事務所では、相続問題について数多くご依頼をいただいていますのでぜひ一度ご相談ください。よくヒアリングさせていただき、現状に対する適切な助言を行うことも可能です。ご依頼後は当事務所による対応以外にも、必要に応じて連携する税理士などをご紹介することも可能ですので、まずはお問い合わせいただけますと幸いです。