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生前贈与と相続はどちらが得か?比較と計算シミュレーション
ある程度まとまった財産があった場合、生前贈与と相続のどちらが得なのでしょうか。ここでは、贈与税と相続税を比較してどちらが得かを説明していきます。
贈与税と相続税の比較
財産を生前贈与した場合と相続させた場合の税金について考えてみましょう。
贈与税
生前贈与を行った場合、その財産について贈与税が課税されます。税額は大まかに以下のように計算していきます。
贈与された財産総額を計算する
その年の1月1日から12月31日までの間に贈与された財産額を算出します。次に、基礎控除額の110万円を差し引き、残りの金額に税率をかけて金額を求めます。
贈与税の税率
基礎控除後の贈与財産額が200万円だった場合、贈与税率は10%となり、1,000万円だった場合は40%となります。
※参照:国税庁ホームページ
相続税
自分自身が死亡し被相続人となったと同時に相続は開始します。相続税については大まかに以下のように計算していきます。
財産総額の計算をする
現金や預貯金、不動産などの財産すべてについてその合計額を計算し、そこから基礎控除額をお差し引きます。基礎控除額は「3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)」の式で算出しましょう。
相続税の税率
被相続人が残した財産総額を算出したら、財産額の大きさに基づく税率をかけて税額を導き出します。財産額が大きくなるほど税率が高くなる仕組みを累進課税とよびます。
※例:財産額が1,000万円のとき税率は10%、財産額が1億円のとき税率は30%など
※参照:国税庁ホームページ
相続の対象となったすべての財産について課税される相続税に対し、相続人に対して生前贈与された分について課税される贈与税では、単純に計算方法を比較することが難しいかもしれません。生前贈与を受けた相続人の財産を合計し、そこから導き出した贈与税額を相続税額と比較してみるのもひとつのやり方だといえます。
生前贈与の有無により異なる相続税額シミュレーション
具体的な数値を当てはめて、贈与税と相続税の計算を行ってみましょう。生前贈与した場合としなかった場合について考えてみます。条件は以下の通りと仮定します。
【条件例】
- 被相続人の財産総額は1億5,000万円
- 相続人は子2人のみ
- 遺言書なし、法定相続割合に基づく遺産分割を行う
生前贈与を行わなかった場合の相続税額
財産総額から基礎控除を差し引くので、「1億5,000万円-4,200万円(基礎控除額)」の式で算出された1億800万円が実際の課税対象額となります。ここから相続税額を計算してみましょう。
【相続税の計算】
- 1億800万円×法定相続割合2分の1=1人あたりの相続財産は5,400万円(相続税率30%)
- 5,400万円×相続税率30%-控除額700万円=1人あたりの相続税額は920万円
(※相続財産が5,000万円を超え1億円以下のとき控除額は700万円)
- 相続人は2人であるため、920万円×2=1,840万円が相続税額となる
生前贈与を行った場合の相続税額
被相続人の死亡前に、子2人に対して1,000万円ずつ生前贈与した場合について考えてみます。贈与税と相続税が二重にかかる点に注意しましょう。
【贈与税の計算】
- (贈与額1,000万円-控除額100万円)×贈与税率30%-90万円(控除)=1人あたりの贈与税額は177万円
- 2人とも同額の贈与を受けているので、177万円×2=354万円が贈与税総額となる
【相続税の計算】
- 財産の総額が1億5,000万円-(生前贈与分が1,000万円×2人分)-基礎控除4,200万円=課税対象額は8,800万円
- 8,800万円×法定相続分2分の1=4,400万円
- 4,400万円×相続税率20%-200万円(控除)=子1人あたりの相続税額は680万円
- 680万円×2=1,360万円が相続税の合計額となる
まとめ
この計算例では、生前贈与を行った方が126万円も節税できていることがわかります。ただし、財産額が大きい人ほど税率も高くなり、同時に控除額も変わりますので、一律に「生前贈与を行った方が絶対に得である」とはいいきれません。
正しく判断するためには、被相続人がどれくらいの財産を持っていたか、生前贈与額はどれくらいか、相続税率はどの分類に当てはまるかなど、専門的な知識が必要になります。できるだけ早い段階で当事務所まで一度ご相談いただくことをおすすめします。必要に応じて連携する税理士の紹介も可能ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。