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相続人で孫に事業承継したい場合の対策
開業医として個人で事業を営んでいるが、その子は事故で急死し、孫が相続人となったケースについて考えてみます。孫は医大生で医師になることを目指しているため、将来的には孫に病院を継いでもらいたい場合、どうしたらいいのでしょうか。ここでは、相続で孫に事業承継したい場合について説明していきます。
子が亡くなっている場合は孫が代襲相続する
自分が亡くなった後は子に病院を継いでもらいたかったが、その子は事故で急死してしまったケースについて考えてみます。本人の弟が副医院長なので、将来的に医学生である孫が医師になるまでの間、弟に病院を任せたいのですが、どういう方法で孫に事業を継いでもらえばいいかが課題です。
相続の流れ
子が亡くなっていることから、医院長である本人の相続人は妻と孫になります。もし孫がすでに医師であるなら、病院建物と敷地、医療設備は孫が承継できますので、遺産分割協議で揉める可能性も低いでしょう。ただし、現在において孫はまだ医学生であることから、ひとまず妻が病院を相続し、妻が亡くなったら医師になった孫に病院を相続してもらう流れが考えられます。
孫による代襲相続
孫は、本来であれば法定相続人には該当しません。しかし、法定相続人である子(孫の親)がすでに亡くなっていることから、代襲相続として病院を引き継ぐことが可能になります。代襲相続とは、子に代わり孫が相続することを意味していますので、親が亡くなっている場合は当然ながら孫が法定相続人となるのです。なお、代襲相続においては、亡くなった子に認められるはずだった相続割合をそのまま引き継ぎます。ただし、今回のケースでは、孫はまだ病院を継ぐことができない(まだ医学生である)ため、配偶者である妻が病院を相続する方が現実的でしょう。
病院を妻が相続したときの相続税
孫はまだ医師として働くことができないため、ひとまず弟に病院経営を任せることとしています。したがって、病院を一旦相続した妻と病院経営する弟との間に賃貸借契約を結ぶ必要があり、「弟は妻から病院施設や設備などを使わせてもらう」という形をとる必要があります。このとき、弟は開業届を出して個人事業主として病院経営にあたり、事業所得を得る立場となります。一方、妻が病院を相続しこれを貸し付ける状況は不動産貸付業に該当するため、弟から払い受ける賃料は不動産所得として確定申告が必要です。
相続税の問題
相続人が妻と孫の2人である場合、相続税の計算はどう考えればいいのでしょうか。開業医は、病院建物や敷地の他、高額な医療設備を所有していることから、亡くなった後に発生する相続税は非常に高額になることが予想されます。したがって、相続税額の減免割合が大きい妻(配偶者)が病院を相続することは節税対策になりやすいのです。
まずは、財産を法定相続割合に基づいて相続したと仮定し、相続税の総額を求め、算出した相続税額を相続人である2人が按分するものとします。妻(配偶者)については、法定相続分である2分の1か1億6,000万円のいずれか大きい金額までの財産を対象に税額が軽減されます。法定相続分が1億6,000万円を超えていた場合は、1億6,000万円までの分が非課税となり超えた分に対してのみ課税され、同様に財産額が1億6,000万円未満であれば全額非課税の扱いになります。
病院を相続した妻の相続について
病院を相続した妻が夫の弟に対して病院施設を貸し付けて賃料を得る仕組みを作った場合、妻は不動産貸付業者という扱いになることから、小規模宅地等の減額特例を受けることができます。国税庁ホームページによれば、妻を被相続人とした場合、病院は「被相続人等の貸付事業用の宅地等」に該当するため、200㎡を限度として課税対象額の50%が減免されることになります。
このようにして、できるだけ相続税額を抑えつつ病院を維持し、孫の代まで引き継ぐルートを想定しておくことが大切です。
まとめ
開業医は相続対象となる財産が多くなるため、健在なうちに「どのように孫の代まで病院を維持するか」「その間に発生する相続税を抑えるためにどのような手を打つことができるか」といったことについてしっかりと考えておく必要があります。
当事務所では、相続や事業承継に注力していますが、最も重要なのは初回のヒアリングであると考えており、必要に応じて税理士と連携することも可能です。現状がどうなっているか、どのような将来像を描いているか、現在ある問題は何かなど、ひとつずつ解決の糸口を見つけるためにも、まずは一度ご相談いただくことをおすすめします。