トップページ > 任意後見人に付与する権限の種類と範囲について
任意後見人に付与する権限の種類と範囲について
自分が年齢を重ね自らの判断能力が衰えてきたとき、身の回りのさまざまな行為を正しくできなくなるリスクが出てきます。そういった状況に備えて結ぶのが、任意後見契約なのです。ここでは、任意後見人にどこまでの権限が与えられるかについて説明していきます。
任意後見契約で任意後見人の権限詳細を定めておく
自分の判断能力が確かなうちに任意後見契約を交わし、将来に備えておくことができます。
任意後見人にどのようなことができるかについて、あらかじめ契約書内で詳細に定めておき、契約発効後は記載の権限事項について任意後見人が着手していきます。逆に、契約書に定められていない事柄については、任意後見人は関与することができませんので、契約案の作成時は「任意後見人ができること・できないこと」をリストアップし、どの業務を依頼すべきかを慎重に検討する必要があるでしょう。
なお、法定後見人と異なる点として、任意後見人には取消権や同意見などが認められない点に注意が必要です。任意後見人に認められるのは代理権だけですので、できれば法律の専門家などに相談しながら「付与できる権限の範囲」を明確にし、契約案の作成に臨むことが大切です。
代理権の内容を書式からひも解く
任意後見契約書を作成する際、任意後見人に依頼したい業務を代理権目録として明記しておく必要があります。任意後見人は、この目録に記載されている行為に限って代理権を行使できるのです。
なお、代理権目録には書式があり、チェックボックスに記入するタイプの第一号様式と包括的に内容を記載する第二号様式のいずれかに基づいて作成する必要があります。
公証人は、任意後見契約に関する法律第三条の規定による証書を作成する場合には、附録第一号様式又は附録第二号様式による用紙に、任意後見人が代理権を行うべき事務の範囲を特定して記載しなければならない。
※e-Govより抜粋
第一号様式
第一号様式は、すでに項目が記載されているなかから必要と思われる代理行為にチェックを入れるものです。たとえば「財産の処分に関する事項」であれば「売却」「賃貸借契約の締結・変更・解除」「担保権の設定契約の締結・変更・解除」といった項目から当てはまるものを選択します。これらチェックリストは、財産・相続・保険・介護・住居・医療その他について設けられています。
第二号様式
第二号様式では細かなチェック項目は記載されておらず、自ら代理行為について該当する事柄を書き入れます。たとえば、不動産など財産の保存・管理・変更や処分に関する事項、金融機関とのすべての取引に関する事項など、内容は第一号と同様ですが、詳細についてチェック項目が用意されていないので、慎重に検討したうえで必要な事柄を記入する必要があるでしょう。
代理権目録に記載できない事柄
代理権目録には、以下の事柄について記載することはできません。
事実行為
たとえば、本人の介護に関わる施設契約などについては代理権目録に記載することができますが、介護という行為そのものについては記載することができません。
死後事務
委任者が死亡したあとに発生する葬儀費用の清算や遺品処分などについては、代理権目録に記載することができません。これら本人死後に発生する事務手続きは、死後事務委任契約を結ぶことにより代理することが可能になるからです。したがって、本人が任意後見に加え死後事務についても依頼したいと考える場合は、任意後見契約と死後事務委任契約の両方を締結する必要があるのです。
医療行為の同意
任意後見契約を交わすと、本人に代わり医療契約を結んだり医療費の支払いを代理したりすることができますが、医療行為に関する同意は認められていませんので注意しましょう。
まとめ
任意後見契約では任意後見人に一定の権限を付与する必要がありますが、権限には決められた範囲があるため、そのなかでどこまでの業務を任意後見人に依頼するか十分に検討を重ねる必要があるでしょう。
当事務所では、任意後見を含む生前対策に注力していますので、任意後見人に関する権限についてもしお困りのことがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。