トップページ > 任意後見人の死亡に備えた対策について
任意後見人の死亡に備えた対策について
任意後見契約は本人の死亡により終了しますが、一方、任意後見人が死亡した時も契約終了のタイミングとなります。ここでは、任意後見人の死亡に備えた対策について説明していきます。
任意後見人が死亡したときの手続き
民法653条に基づけば、任意後見契約は民法における委任終了事由が発生した時点でその効力を無くします。
(委任の終了事由)
第六百五十三条 委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。
※e-Govより抜粋
任意後見人死亡後の手続き
任意後見人の死亡により、任意後見監督人は以下のことを行います。
- 任意後見人の死亡を原因とする任意後見契約終了の登記
- 任意後見人の遺族に対し契約終了を報告し管理していた財産について計算を要求
- 家庭裁判所に対して任意後見監督人の業務終了を報告
これ以降も後見事務を行う必要がある場合、本人・配偶者・四親等内の親族を含む法定後見の申立権を持つ人物が申し立てるよう働きかける必要があります。
複数の任意後見人と契約するときの注意点
任意後見人が亡くなってしまうと、契約終了となり本人が困る事態になることが予想されます。そこで、あらかじめ複数の任意後見人を選び、それぞれの任意後見人に代理権を与えておけば、仮に1人の任意後見人が亡くなったとしても他方の任意後見人が付与された代理権の範疇で活動できるため、本人が抱えるリスクを小さくできる可能性があります。
ただし、任意後見契約は任意後見監督人の選任をもって発効しますので、「1人の任意後見人が亡くなったら2人目の任意後見契約が発効する」といった条件をつけても無効とされる点に注意しましょう。任意後見監督人の選任をもって発効することについては、任意後見契約に関する法律の第2条に明記されています。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号の定めるところによる。
一 任意後見契約 委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約であって、第四条第一項の規定により任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる旨の定めのあるものをいう。
※e-Govより抜粋
複数の任意後見契約を結ぶこと自体に問題はありませんが、仕組みが若干煩雑になります。
複数の任意後見人に代理権を分散して付与する場合
任意後見契約の受任者のうち誰かが死亡したり不適格事由が認められたりしたとしても、任意後見監督人が選任されるまでの間であり残る受任者に問題がなければ、その受任者について任意後見契約は発効します。
複数の任意後見人に重複して代理権を付与し、単独での代理を許可する場合
各任意後見人に単独代理が認められていると、任意後見人の間でいさかいが起こる可能性も否定できません。このため、複数の任意後見人と契約する場合は慎重に受任者を選ぶ必要があります。
複数の任意後見人に重複して代理権を付与し、共同代理のみ許可する場合
共同代理が認められた任意後見契約では、任意後見人のなかから1人でも死亡者や不適格者が出た場合、任意後見監督人は選任されず契約自体が発効しません。
まとめ
任意後見人の死亡に備えた契約の在り方は、法律を理解し適切な人選を行わなければ大きなリスクを伴ってしまいます。当事務所では任意後見契約を含む生前対策に注力していますので、疑問点や不明点などがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。じっくりとお話をうかがったうえで適切な助言あるいは提案をさせていただきます。ひとりで抱えず専門家に相談することがとても大切ですので、まずは一度ご相談いただくことをおすすめします。