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身寄りのない高齢者が活用すべき「死後事務委任契約」
一人暮らしの高齢者が増えるごとに、自分の死後処理について真剣に考える方が多くなってきています。人が亡くなると同時に煩雑な手続きなどが一気に発生しますので、特に身寄りのない高齢者などは死後のことを不安に思っていることでしょう。そこで、ここでは、他に頼る相手がいない方が活用できる死後事務委任契約について説明します。
増え続ける「身寄りのない高齢者」
「令和元年版高齢社会白書」によると、日本の総人口に占める65歳以上の割合は、平成30年(2018年)時点で28.1%とされています。これら65歳以上の世帯に占める一人暮らしの割合は令和2年(2020)で22.4%、10年後の令和12年(2030年)には23.9%にも上る見通しで、まさに右肩上がりといったところです。
時間の経過とともに高齢化はさらに進む見通しですから、死別や離別、未婚などによる独居世帯はさらに増えていくことでしょう。つまり、65歳以上の人にとっては、自分の死後の処理をしてくれる身内がいなかったり疎遠になっていたりする可能性が高くなるため、将来不安を感じざるを得ない状況だといえるのです。
いざとなれば国や自治体が何とかしてくれるだろう、とも考えたくなりますが、実は国や自治体が対応してくれるのは遺体の火葬に限られるのです。賃貸物件の明け渡しや精算、入院費用の精算、各種手続きや遺品整理などあらゆる作業だけが宙に浮いてしまうことになります。
高齢者の死亡後に必要な手続きの代表例
もし、高齢者が亡くなると以下に挙げるような各種手続きや対応が必要になります。
- 葬儀に関すること:通夜や告別式、火葬、納骨や埋葬など
- 費用精算に関すること:入院費や施設入居費、家賃など
- 物品の処分に関すること:遺品整理など
- 家財道具や生活用品の処分、賃借建物明渡しに関する事務
- 自治体への諸届けなど
上記を含むあらゆる手続きは、本来身内や親類が行うべきものなのですが、身寄りのない高齢者や身内と疎遠になっている高齢者などは、自分の死後手続きを行ってくれる人がいません。このようなときに備えて、まだ健在のうちに信頼できる第三者に死後のさまざまな手続きを依頼する死後事務委任契約を結んでおくべきなのです。
生前に死後の手続きを依頼しておく「死後事務委任契約」
死後事務委任契約を結んでおくと、万が一自分が死亡した時でも、あらかじめ依頼された第三者が死後の手続きや処置を行ってくれるため安心です。身寄りがなかったり身内と疎遠だったりする人にとっては、非常に大きな安心材料となるでしょう。
まだ健在なうちに自らを委任者とし、死後の手続きを行ってくれる人を受任者として死後事務委任契約を結んでおくことは、死後の処置で他者に迷惑をかけないためにも大変重要なことだといえます。
委任する相手は友人や知人でも問題ありませんが、死後に法的な手続きが発生した場合に備えて、法律の専門家に相談しそのまま依頼するケースが多いようです。
死後事務に備えて預託金を用意
死後に必要となる手続きには諸々費用が発生するものです。数百円程度で済むものから数十万円~百万円もの金額が必要になることも考えられます。このため、高齢者本人は死後事務委任契約に備えて一定の金額を用意しておくことが重要です。
ただし、用意した金銭を自分名義の口座に入れてしまった場合、死後事務の受任者とはいえ財産に手をつける権限は持たないため、精算や支払いの必要な各種の手続きをスムーズに行うことができなくなってしまいます。
このような事態になることを防ぐためにも、口座ではなく受任者本人に対して一定額の金銭を預けておく必要があるのです。これを預託金といいます。死後事務委任契約を結ぶ際は、死後事務としておよそいくらの金銭が必要になりそうか見積り、十分額を渡せるよう準備しておきましょう。
まとめ
自分に身寄りがないことや身内と疎遠であることから、自分の死後について不安に思っている方は決して少なくありません。そのような人ほど「周りの人にできるだけ迷惑をかけたくない」という思いが強いものです。だからこそ死後事務委任契約の重要性は増しますし、実際に備えておくことで安心できる余生を送れるのではないでしょうか。
死後事務として指定できることがらは比較的多いので自由度は高めだといえますが、預託金をきちんと用意しておかなければ受任者は依頼されたとおりに動けませんので注意しましょう。
当事務所でも死後事務委任契約に関するお問合せやご相談をいただきます。私たちはしっかりと背景事情に耳を傾け、最善と思われる契約内容を一緒に作り上げていきますので、お一人で抱えることなく安心してご一報いただければ幸いです。