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【直筆の遺言書 令和4年1月の事例】疎遠な親族がいる場合の遺言書の必要性・遺言公正証書との比較。

遺言書作成のご相談背景

今回のご相談は来週手術を受ける女性の娘様からでした。

ずっと元気だったお母様に脳腫瘍が見つかり体調が急変したとの事です。手術は来週に迫り術後意識が戻るかどうか分からないと慌てた様子でお電話を頂きました。お母様は数年前にご主人を亡くされており相続手続が大変だったことを思い出され至急娘様に遺言の専門家に相談するよう伝えたのが今回弊所にご連絡を頂いた経緯でした。

 

お母様はご自宅と賃貸されている不動産をお持ちでした。また、預貯金を含め娘様に全て残してあげたいと考えていたようです。しかし、このままお母様に万が一の事があれば相続人は娘様以外にもいらっしゃいます。お母様は過去の経験を活かし残りの動ける時間でなんとか娘様が苦労しないように行動されているのだと感じました。容態は日に日に悪化しているとの事で弊所はすぐに時間を作りお母様へ会いに行きました。

 

2種類の遺言「直筆の遺言書」「遺言公正証書」

どちらの遺言書が良いか聞かれたら弊所では「遺言公正証書」をお勧めしています。理由としてはかなりの高確率で相続手続を遺言者様の意に沿って実行する事ができるためです。公正証書は公証役場の公証人が作成し、原本は公証役場で保管される事になります。相続人であれば誰でも遺言書の開示を公証役場へ依頼する事も出来ます。

 

一方直筆の遺言書はご自身で作成されてご自身で保管される事となるため、万が一亡くなったとしても発見されないというリスクが伴います。また、遺言書に誤字・脱字があった場合遺言書として有効ではないと判断とされる可能性がある上、裁判所へ検認の手続を行わなければなりません。

 

検認とは遺言書の存在を裁判所が認める手続であり遺言書の内容まで保証してくれません。よく間違われるのは検認の手続が終われば遺言書の内容も裁判所が保証してくれていると思われがちですが、実際は遺言書の内容を明確にし、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言書に誤字・脱字があった場合は相続手続が出来ない場合もあります。そのため弊所では遺言公正証書をお勧めしています。遺言公正書は公証役場の公証人が作成するので誤字・脱字の心配もいりません。また、裁判所へ検認の手続を行う必要もないので遺言公正証書の謄本があればすぐに相続のお手続に入る事が出来ます。

 

しかし、遺言公正証書にもデメリットがあります。それは費用がかかること。しかも財産が多ければ多いほど手数料は加算されていきます。でも、家族を守るためなら費用がかかっても良いと弊所にご相談にいらっしゃるお客様の殆どが遺言公正証書を選ばれます。

 

しかし、今回この様な状況で弊所がお母様にご提案したのは直筆の遺言書でした。

 

直筆の遺言書を提案した理由

先ほど遺言公正証書がこれほど良いと説明していたのにも関わらず何故直筆の遺言書を提案したのか、それは「時間」でした。

 

弊所はお電話で相談を受けてからすぐにお母様へ会いにいく日程調整を行いました。

しかし、お母様の入院先の病院の都合(お母様の検査等)やコロナ禍の関係でお会いできたのはお母様の手術予定日の数日前でした。遺言公正証書は公証役場の公証人が必要書類を確認した上で作成します。また、公証役場も準備や他の予約があるため最短でも2週間前後時間が必要でした。(当時の状況)そのため、今出来る事は直筆の遺言書を作成するお手伝いをする事だったのです。お母様の意思を確認し、どのような文章を書けば良いかお伝えしました。コロナ禍で病院での面会時間も限られる中、その日は何とかお母様のお気持ちを直筆の遺言書として残す事ができたのです。

 

その後、手術が成功し体調が回復されてから改めて遺言公正証書を作成する事をお約束し、病院を後にしました。

 

遺言書で守れたもの

それから少し経過し、娘様から一通のメールが届きました。

お母様が術後お亡くなりになったとの事です。

 

でもお母様が最後の力を振り絞り書いてくれた直筆の遺言書は残された娘様を救いました。

もし遺言書がなかった場合疎遠だった他の相続人の了承を得なければ相続手続を行う事が出来ません。母と娘の2人で管理してきた不動産を娘様に残してあげたいというお母様の気持ちを守る事が出来たのです。

 

今回遺言書がなかった場合

今回お母様はご自身の経験を活かし入院が決まってからすぐに娘様へ遺言の専門家へ相談するように促しました。何故、ここまでお母様は慌てたのでしょうか。それは恐らくお母様が今後の相続手続が大変になることをご存じだったためでしょう。

 

今回のケースでもし遺言書がなかった場合、相続手続はどうなっていたのでしょうか。

お手続の流れとしてはお母様の出生からお亡くなりになるまでの全ての戸籍を収集し法定相続人を確定させ、法定相続人全員でお母様の相続財産についてどのように分割していくか話し合わなくてはなりません。

ここで今までお母様と寄り添ってきた娘様が全部相続してかまわないよ、となればいいのですが自分が相続出来るお金は相続したいという方もいらっしゃいます。

ここで相続人の意見が一致しなければ弁護士が介入するケースもあります。例え意見が一致したとしても今度は遺産分割協議書に相続人全員の署名・捺印(実印)をしてもらい印鑑証明書を各相続人に準備してもらう必要があります。

何も相続財産を受け取らない相続人も署名・捺印や印鑑証明書の準備をしなくてはなりません。いきなり疎遠だった親族へ遺産分割について連絡する場合、様々なトラブルに見舞われる可能性があります。

 

直筆の遺言書で進める相続手続

直筆の遺言書で相続手続を進める場合先ほどもご説明した通り、遺言書の検認手続を裁判所で行う事から始まります。

 

今回の直筆の遺言書は専門家のサポートのもと作成されました。公正書証で作成するのに越した事はありませんが、書き方のミスにより遺言書が無効になる可能性は低いと思われます。

しかし金融機関によっては遺言書の書き方について厳しく判定される場合もありますので何度もお伝えしていますが遺言書は公正証書で作成する事を強くお勧め致します。

 

今回のケースでは遺言書の内容通り全てのお母様の財産を娘様に相続されるという内容でお手続を進めていきます。遺言書があるので他の相続人とお母様の相続財産について分割協議する必要はなく相続手続も通常より(遺言書がない相続手続)早く進める事が出来ます。

 

まとめ

今回のケースでは直筆の遺言書を作成する事によりお母様の意思を尊重する事が出来ました。遺言公正証書の方がメリット多く、またご相談にご来所される多くのお客様が遺言公正証書を望まれますが、場合によっては直筆の遺言書が良い場合もあります。ここで遺言公正証書にこだわって公証役場の予約待ちをしていた場合、遺言書を作成する事は出来ませんでした。

 

もし、今、遺言書をどのように書けばいいのか悩んでいるのであれば一度近くの専門家へ相談してみて下さい。専門家は数多くの遺言書作成に立ち会っていますので適格なアドバイスをしてもらえるはずです。

弊所でも90分の無料相談を承っておりますので是非札幌近郊の方はご活用頂ければ幸いです。

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