公正証書遺言は、遺言者が作成した遺言内容を法律の専門家である公証人に口述で直接伝え、その内容を公的文書として保管するものです。基本的に、公正証書遺言が後から無効とされるケースはあまり聞かれませんが、注意すべき点については知っておくべきでしょう。

 

【この記事の要点】

  • 公正証書遺言の要件
  • 公正証書遺言が無効とされるケース
  • 争族トラブルを回避するためのポイント

 

この記事では、公正証書遺言が無効になる具体的なケースについて説明します

 

公正証書遺言が無効とされる具体的なケースとは

まずは、公正証書遺言として成立するための要件を整理しておきましょう。具体的な要件は民法に明記されています。

 

公正証書遺言の要件

民法では、公正証書遺言について次のように要件を定めています。

 

  • 遺言者が15歳に達していること(民法961条)
  • 2人以上の証人の立会いがあること(民法969条)
  • 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること(民法969条)
  • 遺言者による口述を公証人が筆記し、その内容を遺言者と証人に対して読み聞かせるか閲覧させること(民法969条)
  • 遺言者と証人が、公証人による筆記内容が正確であることを承認し、各自が署名・押印すること(民法969条)
  • 上記の方式に則って作成した遺言書であることを公証人が付記し、署名押印すること(民法969条)

 

公正証書遺言が無効とされるケース

民法に定められた要件を満たして作成された遺言書は、公正証書遺言として認められますので無効となることはほぼありません。しかし、次に挙げるようなケースではその有効性が疑われる場合があります

 

遺言者に遺言能力がなかった場合

遺言者に十分な遺言能力がある場合のみ、作成した遺言書は有効とされます。遺言能力とは、遺言内容やその遺言によりもたらされる影響の程度・範囲を理解しうる力を指しており、これらの力がないとみなされた場合は遺言書も無効とされます。したがって、認知能力を問題点として後から争われるケースもあるようです。

 

証人が民法に定める欠格事由に該当する場合

公正証書遺言を作成する際、証人を2名準備し立ち会ってもらう必要があります。ただし、民法974条の「欠格事由」に記載されているとおり、次の者については証人として不適格とされます。

  • 未成年者
  • 推定相続人および受遺者ならびにこれらの配偶者と直系血族
  • 公証人の配偶者や四親等内の親族、書記、使用人

 

口授が不十分だった場合

公正証書遺言の作成時には、遺言者は公証人に遺言内容を口伝えしなければなりません。これを口授といいます。言葉を発することに困難がある場合は、筆談あるいは通訳を介して公証人に遺言内容を伝えることができます。

 

一方、頷きや目配せなどによる意思表示では不十分とされる可能性も出てきます。公証人とのやり取りにおいて「言葉」による遺言内容の伝達ができなかった場合は、その遺言書は無効となることもあるようです。

 

詐欺・脅迫・錯誤があった場合

遺言者が騙されて遺言書を作成する「詐欺」、脅されて遺言書を作成する「脅迫」、思い込みや誤解などにより事実誤認する「錯誤」が認められた場合、その遺言書は無効とされます。

 

公序良俗違反があった場合

民法90条では、公序良俗に反する法律行為は無効である旨を定めています。したがって、たとえば結婚していながらほかに交際相手がおり、その者にすべての財産を遺贈すると記載された遺言書などは無効とされる可能性が高くなります。

 

遺言者が注意すべきトラブル対策

せっかく公正証書遺言を作成しても、ここまで述べたようなトラブルがあった場合、無効とされてしまう恐れも出てきます。無用なトラブルを回避するためにも、遺言者は次の点に十分注意しましょう。

 

認知症などになる前に遺言書を作成する

遺言能力がない状態で作成した遺言書が無効とされるのであれば、まだ元気なうちに遺言書を作っておくことが大事です。認知症の症状が出始めてからでは、のちに遺言能力の有無についてトラブルになってしまうかもしれません。

 

「誰にどの財産をどれくらい相続させるか」「推定相続人に相続させることによりどのようなことが起こるか」など、自分自身が明確に認識できる状態で遺言書の作成に臨みましょう。

 

遺留分トラブルの回避に注意する

形式上有効な遺言書を作成することができたとしても、いずれかの推定相続人について遺留分が発生するような分配方法にしてしまっては、将来的にトラブル化してしまいかねません。たとえば、遺言者に子が2人おり、次男の遺留分を侵害するほどの財産を長男に相続させると記載した場合、次男はこれを不服として遺留分侵害額請求を起こす可能性も考えられます。

 

自分の死後、相続について身内が争うことは避けなければなりませんので、評価額として平等になるよう分配することがとても大切です。

 

付言事項を活用する

自分の老後の面倒をよく看てくれたなど特段の理由がある場合、その人物に対して多く財産を残そうと考えるのも自然なことでしょう。一方、先ほど述べたように、相続分が偏り不均衡が生じた場合、いずれかの推定相続人について遺留分が生じる可能性も出てきます。

 

このようなときは、遺言書に「付言事項」を設け、「なぜ長男Aに多く財産を残したいか」「他の家族はこの事情を理解し争わないようにして欲しい」といったメッセージを残しておくことをお勧めします。

 

付言事項は、遺言者から家族に対して感謝や願いを伝えるための条項で、それ自体に法的拘束力はありません。しかし、遺言者本人の思いを文章化したものですから、遺産トラブルの回避には効果的だといわれています

 

相続内容について生前に意向を伝えておく

遺言書を作成すると同時に、元気なうちに推定相続人を集めて「自分はどのように財産を相続させたいか」「どのような意図があるか」など、直接意向を伝えておくことも大切です。有効な遺言書を作成するだけでなく、関係者である家族にあらかじめ自分の思いや考えを伝えることで、いざ相続が開始しても相続人は慌てたり争ったりすることなく、スムーズに遺産を分割することができるでしょう。

 

まとめ

公正証書遺言は公証人が関与して作成するものであるため、正しい状況下で作れば安心して遺産相続への希望を遺すことができます。しかし、この記事で述べたようないくつかの条件に該当する場合、公正証書遺言でも無効とされてしまう可能性はゼロではなくなるかもしれません。

 

だからこそ、自分自身の健康状態に問題がない状態で、自らの遺言内容をよく理解し将来的な影響も認識したうえで公正証書遺言を作成することが大切です。

 

遺言内容や作成形式など、より正確性を求めたい場合は、専門家に相談して公正証書遺言を作成するのもいいでしょう。当行政書士法人では遺言書作成に関するご相談・ご依頼を多数承っておりますので、ご不明な点や疑問点などがありましたら、ぜひ無料相談をご利用ください。

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